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お銀とこ銀の笛
昔、ある村にお銀とこ銀という姉妹がおりました。
姉妹は、両親にかわいがられてスクスクと育ってきましたが、お銀が十才こ銀が八才
の時に、母は流行の病で亡くなってしまいました。残された父と姉妹は、涙もかれん
ばかりに泣いており、はたで見ていても胸が痛くなるほどでした。
月日がたち、母が亡くなってから三年目、父は村の人の世話で後妻を迎えました。
継母は、父がいるときは姉妹を我が子のようにかわいがったが、父が仕事に出ていな
くなると、うって変わって姉妹をいびるのであった。でも姉妹はどんな目にあっても
歯を食いしばってその事を父には告げませんでした。
冬のある日、父は村の人と連れだって伊勢詣でへ行くことになりました。
お銀とこ銀は、継母に隠れて父を送って行きました。
「お銀、こ銀、なぁに十日もすれば帰ってくるで、おっかあの言うことを良く聞いて
留守を守っているんだぞ。そうそう、お土産は何がいいかな、遠慮はいらん、なんな
りと言うてみな」 姉のお銀は、香箱を、妹のこ銀は、手箱をたのみました。
「よしよし香箱に手箱だな、きっと買うてくるで楽しみに待っているんだぞ」と言
い、 父はお伊勢詣りに出かけました。
父がいなくなると、継母の折檻は、前にもましてひどくなりました。
「お銀!こ銀!こっちへ来いっ!いいか、これで風呂に水をはっておけ。いっぱいに
なるまで眠っちゃあなんねぇぞ」と、継母は、ざるを投げてよこしました。
いくらざるが入れ物とはいっても水だけはくめません。かといって文句を言えばどん
な仕打ちを受けるか知れない。
姉妹は井戸にざるを入れると、小走りに風呂の所へ行き、ポトッ、ポトッと雫を落
としていました。井戸と風呂の 間を何百回も行き来しましたが、雫でいっぱいにするのは大変です、夜になっても姉
妹は続けていました。 北風が突き刺すように吹いていた。姉妹は抱き合って体をあたためていたましたが、
疲れてしまいくずれるように眠ってしまいました。
次の朝、継母が井戸端へ行ってみると、お銀とこ銀は抱き合って凍え死んでおりま
した。 「なに?お銀とこ銀が、熱病にかかって死んでしまったと・・・ま、まさか、そんな
ことって」父は、継母に案内されて、姉妹を埋葬したという裏山へ行ってみると、こ
んもり盛った新しい土の上に二本の小さな竹が抱き合うようにして
生えておりました。父はそこに香箱と手箱を供えて泣き崩れるばかりでした。
それから父は、朝に夕に姉妹の墓にお参りしては、竹に水をやりました。竹はぐんぐ
んと大きくなっていきました。
春のお彼岸近くなったとき、一人の坊さんが通りかかり、姉妹の墓の上の竹をジッ
と見つめて、「この竹をわしに譲ってくださらんかね。見事な竹じゃ、この竹で横笛
を 作ったらさぞかし良い音が出るでしょう、譲ってくださらんか」と、頼んだ。
父は快く譲ってあげました。
坊さんは、その場で横笛を作りました。「いただいたお礼に一曲吹かせて下され」
と、坊さんが笛を吹くと、その音は、むせび泣くお銀とこ銀の声になり・・・おっとう、香箱も手箱もいりませぬ。かかさまといっしょに埋めて下され
と、いう音になるのでした。それを聞いた継母は、まっ青になり、泣き伏していまま
での罪を詫びたという。
お銀とこ銀は、母の墓に合葬された、すると墓の上にあった椿は、今まで花を咲か
せなかったが、それから三つだけ真っ赤な花を咲かせたということです。
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